私の毎年恒例事業となってしまっている夏の富士登山。
今年は「自分も登りたい!」という仲間の声が多かったことから
社員研修という形で富士登山に挑戦しました。
自分を含め、富士登山経験者が2名
初めての挑戦が5名の総勢7名でのアタックです。
富士山研修の目的
この研修の目的はタイトルにあるように、
スカイツリー建設時と同じ自然の脅威を体験すること。
高層建築での鉄骨建方に携わる時に、
限りなく近い自然の驚異を体験した経験があるのとないのとでは、
いざその時を迎え撃つ心構えが全然違うのは言うまでもないでしょう。
夏の登山とはいえ、真夜中の富士山頂では氷点下になり、
天候が悪いときは強風で立っているのがやっととなるくらい吹雪くこともあります。
これは私自身が真冬の大吹雪の中、スカイツリーの頂上で雪かきをした時に体験した
自然の脅威を再現するに最もふさわしい場所と言えますが、
富士山の高度を考えますと、富士山頂の方が過酷かもしれません。
当日の天気予報は生憎の雨。
「これではご来光は見えないかなぁ」という参加者の心配とは裏腹に、
私は、絶好のシュチュエーションやないか。と心の中では楽しんでおりました。
スカイツリーは634mに対して、富士山は3776m。
600mほどでは、気圧の変化はさほど感じませんが、
3000mを超えてくると、体調に異変を感じる程になり、
動悸や息切れ、ひどい症状ですと頭痛やめまいまで起こります。
普通に生活していると味わえないような環境でこそ
体力的にも精神的にも自分の限界を知ることができ、
レベルの底上げをしてもらいたい。という意図があります。
予測できる事故のニオイと対策
自然の驚異を体験することにより、限界に挑戦ということですので、
安全には十二分に配慮が不可欠です。
過去の登山経験から考えつく万全の体制を整えて登山に挑みました。
- 高山病
- ケガ
- 遭難
これらのリスクヘッジのための検証を行いました
標高3千メートルを超えると高山病の危険がある
私は毎年、夏になるとご来光を拝みに富士山に登ります。
散歩にいくような感覚で行くのですが、そんな私でも心配になるのが高山病です。
頭痛、めまい、ひどい時は吐き気ももよおします。
こうなってしまってはもう、下山するしかありません。
今回は登山初心者が多いということで、山小屋に一泊し、
体を高度にならしてから登頂するプランを計画。
富士宮ルートでは唯一診療所が併設されているという山小屋を予約、
参加者が体調不良になっても安心して休める環境を確保し、登山に挑みました。
登山中のケガ
つづいてはケガについてですが、普段から体を駆使して仕事をこなす鳶職人。
足元が悪い登山道でもなんのその。自分の体を知り尽くしてこそ、一流の職人と言えます。
ケガに関しては自己責任ということで(笑
もちろん、万が一というときのために、
テーピング、絆創膏、消毒液、ウェットティッシュ、ロキソニン。
普段から現場に行くときに持ち歩いているものを用意しておきました。
最も命を落とす危険が高い遭難
遭難に関しては、単独行動はせず、必ず3人以上で行動するようにと注意喚起しました。
また、迷子についても、富士登山では、頂上を目指して登山渋滞が発生するほど人がいます。
登山道に迷うということはまずないでしょう。
しかし、夜中に登山するということで視界が暗く足をとられ、
滑落する危険は考えられます。備品としてヘッドライトを全員分用意しました。
この他、用意すべき荷物や、富士山についての情報など、
最低限度ではありますが、知っておくべきことは伝え、いざ富士山にアタックです。
穏やかな天候で絶好の登山日和でスタートした五合目
当日の天気予報によると、夜は天気が崩れる予報。
五合目についた時点では、雲はでているが雨が降りそうな様子もなく、
終始穏やかな雰囲気で登山開始。
何年ぶりでしょうか、ウキウキが子供の頃の様にとまらなく感じたのは。
私はこの年、40歳。人生初めての富士山登頂チャレンジとなりました。
テレビなどでよく芸能人がたいへん苦しそうに登っていくのは何度かみたことがあるが、正直おおげさなのではと思っていました。
全然楽勝でしょう。
五合目からスタート。体調万全いざ、いきなり足元がよろしくない。
溶岩の岩と砂の様な感じで踏ん張る足が滑る、あるきづらい。。。。
20代の同僚達は最初から登るスピードを飛ばしており、いきなり年の差も感じさせられちゃいました。飛ばしすぎでしょ。。。
富士山を初めて登山した時、登りは快晴で初めてにしては
登りやすかったと思います。
何度となく登っている富士山。
しかし、自分の意識に及ばないところで不調を抱えていると高山病になる可能性もあることから、登り始めはペースを意識し、すこしでも体の異変を感じれるように慎重にのぼりました。
6合目。垂直階段を登ったような疲労感。この程度なら行ける。
おっと、傾斜角度がきつくなっている。と感じたまでは心に余裕があり覚えている。
六合目の途中から明らかに酸素が薄い、歩幅がどんどん小さくなっていくのを感じました。とりあえず心を無にして登ろうと自分に言い聞かせ。。。。
七合目の山小屋で休憩。この時点ですでに余裕なし。
売店では缶ビールが350mm600円。なかなかインパクトのあるお値段でした。
出発するも、休憩後だけど3分も持たずにゼーゼーいうてます、
無理、心が少し折れそうです。
しかし、富士山から見下ろす麓と街の景色は感無量。
スケールの大きさを感じました。
とりあえずがむしゃらに登り続け、登り続ける中、
頭も痛い、呼吸も苦しいとすでに富士山の洗礼をうけました。
しんどいのかたのしいのかわけわからん。
無事8合目の山小屋に到着
17時には八合目の山小屋まで何のトラブルもなく無事に到着できました。
八合目の山小屋では夕食をとり、仮眠をします。
起床は午前1時、約5時間ほど眠りにつけます。
今回はまだ雨に振られることなく山小屋へ到着できましたが、
この時点で雨にふられてしまうと、この先の登山の難易度が急激にあがります。
初めての参加者も多かった為、天候にめぐまれたのは幸いでした。
脳が脈打つ痛さと戦いながらなんとか八合目に到着。
八合目で減圧調整として、山小屋で宿泊休憩をしました。
仲間といただくカレーライスはとても美味しく感じました。
7合目を過ぎたあたりから鈍い頭痛を感じる。酸素が薄いせいか、体がだるく眠い。まぁこれくらいなら想定の範囲内。仮眠すれば治る程度やし心配はいらんかな。
一度体を横にすると、トイレに行くのもおっくになり時間の許す限り、仮眠を取り体力を回復させるつもりで床につく。途中目をさますことなく、起床時間までねてしまった。
日本最高峰へ目指して、ここからが登山の醍醐味
1時起床、外は真冬の寒さで雨。視界が悪く霧が立ち込め、昼間とは打って変わっての悪天候。
過酷な状況での登山になることは間違いない。
それぞれの登山ペースを合わす意味もあり、スピード感のある若手と、
のんびりペースのベテランの2チームに分かれる。
途中9合目の山小屋で一度集合し、その次は山頂で集合。
ということにし、出発する。
夜中の出発まで仮眠をとる。ここでも頭が脈打ってなかなか寝付けず山小屋の外に空気を吸いにでました。そこには幻想的な雲海と眩しいくらいの月光がありました。
まさに絶景でした。頭痛も感じないくらい位いい景色でした。
ご来光はもっとすごいのだろうなと思いながらももう一度仮眠。ご来光にあわせて、深夜に起床、天候確認のための山小屋の外に出ると景色は一変して濃い霧に包まれていました。
山頂の天気はとても変わりやすいときいていましたが、3時間あまりで急変するとは思いもしませんでした。
自然の猛威は容赦なく、想像にも及ばない過酷な現実が待っていた。
山頂に近づくにつれ、雨が激しくなり、気温も下がる。
風も強く、体感温度は確実に0度以下。
この環境こそ、まさに研修にふさわしいもの(笑)
9合目の山小屋で集合した時点では、かなり体も冷え切って、体力的に不安を感じている参加者も多数。
全員のコンディションを聞き、問題ないと判断。再び2チームに分かれてペースを整える。
必ず山頂で待っておくように。
と伝え若手の先発チームは出発。
しかし、この判断が不測の事態を招くことになってしまいました。。。。。。
運悪く台風が接近しており危険な状況でした。私が覚えている限り夏場なのに体感は0度を下回っていたと思います、さらに風も吹いており横殴りの雨でした。視界も悪くそのなか登山にチャレンジすることになりました。
山頂に近づくほど天候が悪化し、視界が狭くなる。最初は誰かと話をしながら登っていたが、窮地になるとついつい自分のことだけを考えてしまう。
雨合羽に着替え暗闇の中ヘッドライトで足元を灯して山頂目指して出発しました。出発してすぐ雨が降り始め、追い打ちをかけるように風も強く吹き荒れ九合目付近で体は凍りつく様に冷え、大自然の過酷さを肌で感じました。
私は寒さ対策は万全でしたので、全く平気。
体調も絶好調。どれだけ天候が悪くとも何の不安もありません。
しかし、それは私だけが余裕があったようで、
この判断が後に取り返しのつかない事態を引き起こしてしまった。。。。
先発隊から少し遅れを取って山頂に到着。
豪雨と強風でたっているのも精一杯の状態。
風速は20m以上。
私はのんきに、さて、みんなはどこで待っているのだろう〜
なんて、悪天候を楽しみにながら頂上を散歩してましたが。。。。。
はて、どこをさがしてもらしきパーティーが見当たりません。
スマホを確認してみるが、圏外。
しかも、豪雨すぎて使える状態ではありません。
待つこと15分、最後の一人が山頂に到着。
開口一番
「さっき若手チームとすれ違って、先に降りるっていってましたよ」と。。。。
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富士山研修を終えて参加者の声
まさかの山頂ではぐれた為、猛ダッシュで下山。
どうにか先頭グループに到着し、安否を確認。
その後は5合目のレストハウスで待ち合わせることに。
私は再び登山、最後尾グループに合流し、一緒に下山してきました。
大袈裟に聞こえるかも知れませんが、命がけの挑戦だったと思います。
最終的には頂上に登れたもの寒さと疲れはピークに達していたと覚えております。
そのなかの下山は登りよりもかなり大変でした。全員が緊迫している状況でもありました。
現場においてもこの緊迫した空気がありつねにみんながプレッシャーで緊張している。富士山と共通する部分を感じます。富士山は無事な下山は成したもの安全ではありませんでした。
だが現場では安全じゃありませんでしたなど言えない。安全を100%作り提供する。安全に対する気持ちを改めるいい機会になったと思います。
私は初めて富士山に登り、「準備」がどれほど大切であり、自分の身を守るものであるのかと思い知った。
今回の研修が初めての富士登山であり、私は事前にアウトドアスポーツ用品店で登山用の靴や上下のウェア、リュックといった一式のものを揃えた。その際にお店の人と相談しながら持ち物を選ぶことで、富士山の気候や登山中のアドバイスといったいくつかの情報を得ることができた。
そして実際に行った登山で、自分が準備してきた物の数々に救われる場面があった。
登山は自分が想像していた以上に過酷だ。
最終的には怪我なく無事に山頂まで行き、帰ってくることができたが、もし十分な準備をせずに山を登っていたら私は一体どうなっていたのだろうかと考えさせられる。
もしかしたら高山病や不注意で怪我や動けなくなっていたかもしれない。
一緒に登ったメンバーの一人は、登山用ではない普通のスポーツシューズを履いていたが、登山中に靴が濡れ、水分の重さとそれによる冷えに襲われていた。
思った以上に過酷な富士登山であったが、事前の「準備」の過程を経たからこそ、私は登山に対する多少のイメージや心構えをすることができたと思う。
この富士山経験を日常生活に照らし合わせて考えると、「どんな行いも自分へ返ってくる」と実感した。「準備」は必要な道具を揃える意味を持つだけでなく、無意識にマインドもセットされる。
しかし、「これで大丈夫だろう」という軽視や思い込みの準備をした際には、手を抜いた分だけ、自分に何らかの形で返ってくのだと富士登山を通して学ぶことができた。いつどこで何が起きるかわからない世の中だからこそ、常に自分が何をできるのかを考えて行動したい。
若い同僚達は先に富士山頂に到着したのだが、あまりの過酷な寒さと打ち付ける雨に耐えることが出来ず、下山を先にしてしまうというミススタンディングがおこりました。
極限の環境ではルールの判断基準が難しくなるのだと感じました。私も少しの遅れで山頂に到達しました。しかし、残念ながら悪天候の為、その日のご来光は富士山の係員によって中止が告げられていました。
これはこれでとても良い経験をすることが出来たと感じました。
研修総括
私はどれほどの雨であろうが風であろうが、
現場でそれ以上の過酷な環境で仕事をしてきた経験があったので、
この程度の雨風と寒さは取るに足らない
と感じていました、その考えが大きな間違いでした。
未経験の彼らにとってはどうすることも出来ず、
勝手に下山という判断をしてしまったのでしょう。
通常であれば、このような行動は絶対にあり得ないことです。
極限の状況下では冷静に考えることが出来ず、適切な判断が出来なくなってしまいます。
本能で危険を回避する。それほどまでに、富士山頂の自然の猛威は危機迫るものがあったのでしょう。
私自身は天候が荒れていることは予測の範疇でした。
そのことを伝え、彼らが雨風がしのげる場所があると知っていれば、
また判断も変わったに違いありません。
現場で事故が起こる原因として多いものがヒューマンエラー。
まさに今回はその例とも言える事案です。物事を軽視し、詰めが甘い。
たった数秒間、言葉を交わすだけで回避できたはずの結果です。
今回は私一人が計画を建て、アテンドしていたので、
- チームを分けた時に、状況判断できる経験者が少なかった。
- 私だけが知っていた情報があり、それを共有していなかった。
ということから、不測の行動につながったと反省しました。
次回は、経験者からチームリーダーを選任し、
的確な状況判断ができるように情報を十分に共有することで対策をとろうと思います。
そして、荒れに荒れていた天候は下山中の日の出時間にはすっかりおさまり、
わずか数時間後には穏やかな空の下、雲の隙間から日の光が刺しておりました。
こうして富士山研修は結果的には無事に終えることができました。
山頂でのご来光は次回のお楽しみです。
本日もご安全に!